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(2008. 5. 20号)
家賃が記録的な高値に
 
「この人たちはいったいどこに住めば良いのか?」
太平洋を隔てた米国のお話ですが、他人事ではなく、記事を読み胸が痛みました。
ハーバード大学のレポートによると、米国では、所有している自宅を手放し賃貸物件に転居する家族が急増したため、家賃が記録的な高値に上昇しており、更にこの傾向は今後も続くだろうと予想しています。

もちろん、自ら好んで自宅を手放しているのではありません。借入金の返済が間に合わず抵当流れになってしまい、やむを得ず賃貸物件に引っ越すはめになっているのです。しかも、抵当流れが多くみられるのは、「経済的に一番脆弱な賃借人が多い地区」だといいますから、事態は非常に深刻です。

日本も米国ほどではないにしろ、ここ数年で、債務負担の苦しみから逃れるため、自宅を売却して賃貸住宅に転居しようと相談に来る方がずいぶん増えたように感じます。また、競売手続きとまでいかなくても、税金等を滞納したために行政などから差し押えられた不動産を取り扱うことも多くなりました。

不動産の購入は、一生で一番大きな買い物というだけでなく、就職や結婚と同様、その人の生活スタイルや考え方にまで影響をもたらす、とても大きな人生のイベントと考えることができます。
それだけに、実際に購入を決断するまでには、家族でよく話し合い、時間をかけ少しずつイメージを一致させていく場合が多いのですが、中には、自分たちだけでは決断することができず、不動産業者に背中を押して欲しいと思っていることもよくあるようです。

しかし私たち不動産業者は、背中であれば全部押して良いかといえば、そうではないはずです。
現在、不動産を売却しても購入した価格より高く売れるとは限りません。むしろ売却損を出す方が多いかも知れません。日本では通常、建物は経年劣化とともに価値を下げますし、築年がさらに経過してくるとゼロ査定、あるいは更地に戻す費用の分マイナス査定になることもあり得ます。このように見ると、不動産を購入するという行為には、家計に含み損を抱えるリスクがはじめから内包されているのではないかと思われます。
リスクの大きさは個々の不動産や家計の状況で異なるため、アドバイスには慎重を期す必要があるはずですが、実際の現場では、最終的な判断は自己責任とはいえ、時々、お客様から売却の相談を受けていて内心やりきれない思いをすることがあります。

ところで、記事によるとこのレポートでは、家賃の高騰を緊急の最優先課題ととらえ、例えば「廉価な賃貸マンションとして利用可能なことを保証するようなプログラム」等、米国政府は早急に検討する必要があると提言しています。

日本の場合、米国のように賃貸住宅市場で需給が逼迫しているような状況にはありませんが、それでも家賃の水準で気になることがあります。それは、生活保護を受ける前提で賃貸住宅を探しに来る方は確実に増えているのに対し、生活保護が適用される範囲の金額では、賃貸住宅を探すことが非常に困難になってきているということです。
このことは、多分に地域的な要素があるのだろうと予想しますし、生活保護には偽装申請など様々な問題があるのも事実だと思いますが、一方で、日常生活に本当に困っている人たちが存在するのも紛れもない事実です。
我が国でも行政が中心となり、真の困窮者に対する生活支援プログラムを、より一層充実させて欲しいと願うばかりです。



高橋満

高橋住宅センター株式会社常務取締役。マンション管理士 CFP
宅地建物取引主任者法定登録講習講師、法定実務講習講師等を歴任
神奈川県不動産コンサルティング協議会事業開発研究委員
『住宅ローンのことがわかる事典』(西東社)、『FP技能士2級攻略問題集』
(TFP出版)等 編集・執筆協力多数
http://www.tjc.jp