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(2007. 12. 11号)
賃貸不動産経営管理士への期待


  07年11月6日号の一面の見出しに「基本講習スタート」として紹介された、不動産業4団体の統一資格制度「賃貸不動産経営管理士」。そのはじめての講習を290人が受講、講習後に修了試験が行われたといいます。今年度内に東京大阪で計1600人が受講予定でキャンセル待ちも出ているとのこと。「行政の政策でも、ストック重視が明確に打ち出されてきた。仲介の延長としての管理業務では対応しきれないレベルになっている」ことが、賃貸管理業務の専門性を高めたいというニーズの背景になっていると見られています。

 同記事の解説、「賃貸、新時代を担う」では、その重要なポイントを、賃貸住宅経営が分譲マンションと違って、本質的に<サービス業>であることで説いています。「ホテルやレストランは限られた時間で快適な空間を提供するが、賃貸住宅は数年に及ぶ。そのためのノウハウは多種多様な分野に及ぶ高度なものになる」というのです。カフェ経営の経験から痛いほど良くわかります。それにこのような多様で高度な内容は、ファイナンシャルプランナーが顧客のために心がけている観点にも重なります。「賃貸不動産経営管理士」は時代のニーズにマッチしているのでしょう。

 同号には、日本FP協会の07年度FP実態調査の結果が記事になっていました。他に取得している資格として「宅建」取得者が全体の2割であるというのが見出しになっていましたが、私が注目したい数字は、FPが必要とされるライフステージという質問項目です。1位が「老後」(28.8)、2位が「住宅」(24.8%)、3位が「定年(退職)」(18.6%)だということです。収入や健康の不安や住宅ローンの返済などの形はとっても、結局ベースは生活を営む環境についての多様なアドバイスが求められていると思われるのです。

 07年11月13日号、毛利信二・国交省不動産業課長の話でも、不動産業界は中小零細業者が支えているという認識をしめしていて、コンサルティング力などの劣る中小業者の苦戦が伝えられているという記者の質問には、「だからこそ、それほど大きな物件でなくてもいいから、賃貸管理のような仕事が地域の不動産業者にとっては大切になってきているのではないか」と、賃貸不動産経営管理士の重要性を示唆していました。その姿は中小業者がむしろ有利な、地域密着型の生活支援サービス業とでもいえるのではないでしょうか。

 業界紙の責務としてこういった不動産業界の活性化を目指し、自ら不動産経営のコンサルティング事業に乗り出した住宅新報社は、同号の「コンサルを聞く」という連載の第1回で、津村重行氏の業界の将来ビジョンを聞いています。「住宅・不動産の領域は極めて幅広く、包括的に理解することは難しい。例えば不動産売買、行政訴訟といった専門家を細かく分けていくことが重要だ。いわば、小さなエリアの専門家が今後より必要になってくる。」地域だけでなくある業務の専門分野のエキスパートになることも中小業者には向いているのだといえましょう。賃貸管理のプロというのはより奥深いものになりそうです。

 不動産業界がコンサルタント的な発想が求められつつあるわけですが、同号ではいちはやくCFネッツがコンサル業務をFC展開するという記事も掲載されていました。「加盟店に対してCPM(不動産経営管理士)を取得した人材「スーパーバイザー」を派遣。不動産投資や資産活用ノウハウを直接伝え、同社と同様のコンサル業務が担える体制を早期に構築する」ということです。新しいアイディアのビジネスが生れつつあります。

 これまでのビジネスキャリアとして、商業系のデベロッパーと生命保険募集人とカフェ経営を経験してきた身としては、見どころ満載の業界の激戦期だと感じます。ただの宅地建物取引という市場取引だけでなく、地域の不動産を見据えてじっくり収益作りのためのノウハウを結集する。サービス業としての賃貸管理という発想によって、不動産業界はむしろ中小業者によってイノベーションが起こるのではないかという期待さえもちます。

 そんな視点で、住宅新報の記事を見ていくと、同号でも、「公認の住宅取引所で探索」というコラム記事、「定借地で賃貸マンション」というビジネススキームの紹介、「90年以降完成のワンルーム流通シェア4割に」という調査報告、いずれも小さな記事ですが、不動産業界の変化の鼓動を感じさせる大事な情報だということができます。こういった情報に目を留めること。あれ、なんだろうと思うところから、ビジネスと投資のチャンスがあると思うのです。

 激動期の不動産業は、ビジネスチャンスなのだと思います。もちろんトライアンドエラーはあると思います。そして様々なタイプの不動産ビジネスが生れてくると、今度は不動産投資が活性化すると考えられます。ただ大型物件を建設し売買するだけでなく、地域密着型のビジネスモデルに投資するという発想が広がるでしょう。そこで重要なのは収益を永続する賃貸経営ノウハウです。冒頭に戻りますが、そういうわけで賃貸不動産経営管理士に注目です。


梶村 陽一(かじむらよういち)

東京大学文学部哲学科卒 1989年株式会社パルコ(流通系デベロッパー)入社、人事および渋谷店営業を経験。1997年ソニー生命保険株式会社に転職、ファイナンシャルプランナー資格を取得。2000年生命保険代理店に転じ、同じ頃から、独立系FP会社、女性SOHO支援会社、ブックカフェ運営会社など複数のベンチャー企業の立ち上げに関与。現在、多彩な経験からパーソナルファイナンス、ビジネスリサーチ&インベストメントにつよい経営コンサルタントとして活動。次世代型のFP人材ビジネス・不動産ビジネスをじっくり準備中。神楽坂在住。