住宅新報Web
住宅新報から記事を検索     

今日のニュース 住宅新報
 
 
ニュース
本
資格
セミナー

ブログ

広告掲載

住宅ローン金利表

読者コラム

現代不動産用語事典

採用情報

ニュースを読む
今日のニュース 新報ダイジェスト バックナンバー 特集コラム
column_title
(2007. 11. 27号)
膨大なニーズを秘める高齢者住宅


   07年10月9日号の一面では、「終の住まい 高専賃に照準」として「高齢者専用賃貸住宅(高専賃)」にもっと住宅・不動産会社が、積極的に取り組むべきではないかという趣旨の特集記事が組まれました。関連して同月2日号では、日本賃貸住宅管理協会が大田区の2ヵ所の高専賃への視察研修会を実施したこと、また同月16日号では、「夫婦で入居“高専賃”」と題して埼玉県栗橋での中堅流通会社による事業化について記事に取り上げています。

  「高専賃」は、01年に制定された「高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者居住法)」に基づき、高齢者専用の賃貸住宅として05年10月に創設されたそうです。さらに特筆すべき最近のこととして、医療法の改正で、07年4月から有料老人ホーム、そして同年5月から高専賃の経営が医療法人に認められました。いわば不動産業兼営解禁です。

  一方、介護に関する社会的な関心の広がりから、高齢者の生活の質への認識が深まり、画一的な介護サービスを提供する施設よりも、自立を支える「自宅の延長」のような高齢者住宅には、この「高専賃」がふさわしいと急速に考えられ始めているようです。また有料老人ホームなどに対する自治体の総量規制を受け、介護事業会社が老人福祉法上の有料老人ホームではなく、「高専賃」に切り替える動きがあり、一定の要件を満たし介護保険上の特定施設に認定されれば、「特定施設入居者生活介護」の介護サービスが受けられるというメリットもあります。

  こうして医療法人や介護事業会社の動きが急であるのに対して、一般の賃貸住宅市場ではまだ高齢者の入居を拒む例が目立つし、将来の介護に不安な世帯にとって医師や看護師と連携している高専賃は魅力ではないか、と記者は指摘します。「現在、日本の世帯構成を見ると、65歳以上の高齢者が単身または夫婦だけで暮らしている世代が50%を超えている」のです。「高齢者が自宅の延長として気軽に住み替えることができる高齢者住宅」への膨大なニーズが秘められているはずです。

 ただこの高専賃事業は、医療・介護施設との連携があれば、それで良いというものではありません。シルバーライフネットワークの向井幸一社長によれば、入居者から見た高専賃の魅力は、「ソフト面、つまり食事や介護、家事サービスなど多様な生活支援サービス」にあるといいます。逆にいえば、「生活支援サービス」の内容と費用を明確にした通常の賃貸借契約書とは別の、この契約書が極めて重要だということでしょう。高専賃のこうした「生活支援サービス」を比較検討する高齢者が増えれば情報公開がより求められるようになるでしょう。そこでは、向井社長の話すとおり「介護、医療、住宅、それぞれ専門分野を生かして事業をしていくべきだ」ろうと思います。

  住宅として入居率を高める工夫も極めて重要です。これはまさに不動産業のノウハウです。苦戦している高専賃を分析したうえで、福祉村の山本久雄社長は「高齢者住宅こそ、コーポラティブの発想が必要かも知れない」と話しています。こうなるとファイナンシャルプランナーによる広義の生活支援もサービス内容に加わってくるような気がします。

  住宅業界の取り組みでは、早くから各種介護保険施設や医院併用住宅の事業コンサルティングや建物の設計・施行請負、運営支援を行ってきたパナホームが非常に積極的であることや、前回コラムでも紹介した共生型住宅「狛江共生の家『多麻』」を建設した多摩中央ミサワホームの具体例が取り上げられています。16日の記事の場合も、本業は不動産仲介業のエステート白馬が、高齢者施設の事業化を検討し、運営のための別会社を設立し介護保険事業所の認可をとったものですが、「在宅診療を行うクリニック併設型の医療法人向け高齢者専用住宅」の展開も視野に事業を拡大していくといいます。医療法人や介護事業者向けの事業ノウハウをためていくケースがみられます。

  2日の記事の視察研修会でも意外なノウハウが紹介されています。学習研究社グループの学研ココファンは、建物の賃借契約が借家人の死亡するまで存続する「終身建物賃貸借制度」の認可を受けたといいます。生命保険会社にいたことのある私にとっては、終身保険でおなじみの発想ですが、「終身にわたり住み続けることができる安心感が、住み替えの動機になっている」というのはもっと注目されてもよいでしょう。

 こうして高専賃に照準を合わせてみていくと、10月16日号の大言小語に指摘されるように、「オペレーション(運営)を重視した不動産」が新潮流になってきたように感じられます。こういうときには「不動産を広く社会資産としてとらえる能力が不動産業の本質になる可能性もある」のでしょう。まさしくその通りで、秘められた膨大なニーズをどうすくいとるか、不動産業の新分野へのチャレンジが求められている気がします。


梶村 陽一(かじむらよういち)

東京大学文学部哲学科卒 1989年株式会社パルコ(流通系デベロッパー)入社、人事および渋谷店営業を経験。1997年ソニー生命保険株式会社に転職、ファイナンシャルプランナー資格を取得。2000年生命保険代理店に転じ、同じ頃から、独立系FP会社、女性SOHO支援会社、ブックカフェ運営会社など複数のベンチャー企業の立ち上げに関与。現在、多彩な経験からパーソナルファイナンス、ビジネスリサーチ&インベストメントにつよい経営コンサルタントとして活動。次世代型のFP人材ビジネス・不動産ビジネスをじっくり準備中。神楽坂在住。