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(2007. 10. 16号)
共生型住宅の豊かな可能性


  少し前になりますが、2007年9月11日号の一面に、「共生の住まい」浸透―、という二人の記者による優れた取材記事が掲載されました。この記事には非常に啓発されると同時に、今後自分が開拓していこうとしている不動産ビジネスを考えるにおいても、たいへん参考になりました。

 ここ数年、少子高齢社会の進展などにより居住形態は大きく変容、一人暮らし家庭の増加で、地域コミュニティの復権が求められてきました。そこで「居住者同士が助け合いながら、交流を深めていく」、この「共生の住まい」という考え方が注目を浴びていると、最新事情をレポートしたものです。

 狛江市に完成した、一人暮らしの高齢者をサポートする地域共生住宅「狛江共生の家『多麻』」のように、共生型住宅は「一言でいえば居住者が生活空間の一部を共有しながら暮らすという居住形態」です。主に高齢者がプライバシーを保ちながら同じ住宅内で助け合いながら生活するグループリビングの他に、コーポラティブハウスやコレクティブハウスなど大都市で増え続けるスタイルもあり、まさに「多彩な居住形態、続々」のようです。

 もちろん新しい居住スタイルが増えれば新たな課題も生じてきて、そんな課題に対応しようと、「NPO共生の住まい全国ネット」は、『未来の長屋』を目指して研修会、調査、相談などを積極的に進めているということです。どうやら単なる高齢者のための共同生活ではなく、それぞれの生活の自立と支援の関しての様々なアイディアが、各地の共生型住宅でさかんに実験されているように感じました。

 同NPO法人の事務局長である岡本健次郎氏は、共生型住宅が注目される背景を「福祉的問題、住宅的問題、家族的問題」に分け、これらを受けて「現在の生活をよりよいものに変えていこうという機運が潜在的に高まっている」と指摘されています。何でもない表現ですが、これを「生活の思想」と呼んでもよいでしょう。とはいえ唯一の理念形があるわけではなく、「その地域の状況をよく観察すること」が重要です。運営する地域のNPOと設計施工する工務店等が積極的に連携することを提唱し、将来は多種多様なモデルの登場や多世代の交流などを想定されています。

 すでに「狛江共生の家『多麻』」では夕食が提供される「コミュニティサロン」があり、植栽や田畑のある中庭までウッドデッキでつなげられ、また“庵”と呼ばれる3坪弱の別棟は入居者が自由に使用できるのだそうです。まるでこれらは「カフェじゃないか」と思いました。都市機能の中でも、外と内を繋げるオープンスペースが重要だというのは、6年半経営してきた麹町のブックカフェで痛いほど実感してきたことです。こちらは勝手にビジネス街のオアシスと呼んでいました。

 こんな風にみると、単に高齢者の施設ということを超え、共生型住宅は「生活の思想」を豊かにする具体的なアイディアを生み出していく、最先端のラボという言い方もできるかもしれません。その可能性を広げるために、地域を巻き込んで生活や仕事の場を共有するという考え方を深めて見ましょう。

 例えば高知に「世界最強のセルフビルド建築」とされる「新しい生活空間」の「沢田マンション」と呼ばれる建物があり、とても刺激になります。これはアート作品のようでもあり、あるいは究極の共生型住宅かもしれません。参考にご紹介まで。


梶村 陽一(かじむらよういち)

東京大学文学部哲学科卒 1989年株式会社パルコ(流通系デベロッパー)入社、人事および渋谷店営業を経験。1997年ソニー生命保険株式会社に転職、ファイナンシャルプランナー資格を取得。2000年生命保険代理店に転じ、同じ頃から、独立系FP会社、女性SOHO支援会社、ブックカフェ運営会社など複数のベンチャー企業の立ち上げに関与。現在、多彩な経験からパーソナルファイナンス、ビジネスリサーチ&インベストメントにつよい経営コンサルタントとして活動。次世代型のFP人材ビジネス・不動産ビジネスをじっくり準備中。神楽坂在住。